事例紹介 | 銀座通り法律事務所
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 事例紹介 - 株主総会の準備と運営

株主総会の想定質問と弁護士の役割その3 株主総会の想定質問と弁護士の役割

 【18日(金曜日)から定時株主総会が始まった】

事例紹介 私の事務所(銀座通り法律事務所)がアドバイザーとして関わっている上場企業の株主総会が18日(金)から始まりました。18日(金)は6月総会としては早い方で、多くは23日(水)から26日(金)に開催されます。株主総会が同じ日に集中することについて、かつては特殊株主排除対策という面がありましたが、一般株主主体の株主総会となった今では、開催日の分散化の傾向があります。しかしながら、当該事業年度決算後株主総会招集通知を発送するまでに、取締役会は計算書類、事業報告書とその各附属明細書を作成し、作成後会計監査人と監査役に提出しなければならず、それに関し会計監査人から会計監査報告書、監査役会から監査報告書を受領しなければならず、その上で取締役会で招集通知を決めます。そのため招集通知の発送日は6月上旬となり、発送日から開催日まで中14日を空ける必要があるため、どうしても6月下旬に集中してしまいます。集中する結果、一人の弁護士が直接関わることができる会社は数社が限界です。

【招集通知のWEB修正】

 株主総会の決議に瑕疵(かし)があるとして、取消し事由に該当するものの多くは、招集通知書並びに添付書類に記載漏れがあったり誤記があった場合です。
招集通知発送後に記載ミスを発見した場合、以前は訂正状を送付するなどして修正する実務が行われてきました。この方法とは別に、会社法は、インターネットを利用して合理的に修正する方法を認めており、これを一般的にはWEB修正といいます(会社法施行規則65条3項、133条6項、会社法会計規則133条7項、134条7項)。平成21年6月総会の会社のうち9割以上がこのWEB修正を採用しています。WEB修正を採用するためには、修正方法(掲載アドレスを含む)を招集通知とあわせて株主に通知することが必要です。多くの会社は招集通知の末尾に次のように記載しています。「招集通知添付書類ならびに株主総会参考書類の記載事項を修正する必要が生じた場合は、修正後の事項をインターネット上の当社ウェブサイト(http://www.○○○.co.jp/)に記載いたしますのでご了承ください。」
WEB修正はすべてに対応できるわけではなく、計算書類、株主総会参考書類、事業報告が対象となります。狭義の招集通知、監査報告は対象外です。

【想定質問の作成】

<役員が回答しにくい質問をつくる>

 銀座通り法律事務所は株主総会の準備の中でも想定質問の作成に力を入れています。どの会社でも社員が想定質問を準備しています。法務部が各担当部の協力を得て作成する傾向にあります。ただ、社員作成の想定質問はQ(質問)よりもA(回答)に力を入れています。質問を受けたときに議長(社長)その他の取締役や監査役にこう聞かれたらこう答えるといいですよという模範回答を示すことが彼らの役目だからです。事務所では社員作成の想定質問集を参考にしながら、社長以下役員が回答しにくい質問をつくります。それは回答しにくい質問と答えの中にその会社の抱えている問題点が浮きぼりにされるからです。

<質問作成にあたって検討する資料>

 事務所では当該会社が克服すべき課題は何かということを常に頭において定時株主総会に臨みます。事務所が独自の想定質問書を作成するにあたり次の資料を検討します。①定款 ②過去5年間の招集通知書 ③毎年5月中旬に発表される過去5年間の決算短信 ④この1年間の四半期ごとの決算短信 ⑤会社案内 ⑥製品カタログ ⑦ホームページ ⑧社内報 ⑨会社の理念・行動倫理規定 ⑩証券会社作成のアナリスト向け企業分析 ⑪想定質問集作成者からのヒヤリング ⑫営業担当社員からのヒヤリング

<質問をストレートにぶつける>

 顧問弁護士はどの株主よりもたくさんの情報を入手できる立場にあります。事務所ではこれらの情報をもとに顧問会社が克服すべき課題を考え、これをストレートに社長にぶつけるように心がけています。顧問弁護士と社長とが会社の克服すべき問題点について率直な対話ができる場として定時株主総会を準備する課程がベストな機会だと思います。社長は株主からの質問にどう対応するかということを意識していますので、会社の抱えている問題点についてどう答えればよいか真剣に考えます。ストレートな質問は社長を含む取締役が会社のあり方について考えるベストな機会であり、事務所ではそのための題材を提供するよう努めています。弁護士という立場からは法務チェックでよいのかもしれませんが、事務所は経営そのものに踏み込んだ突っ込んだ質問をします。これができるのは定時株主総会を準備する機会しかないと思いますし、また歯に衣着せぬ質問をすることが会社のためになるし、コーポレートガバナンスの視点からそれができるのは弁護士しかないと思います。事務所は社長がいやがるような聞きにくい質問を平気でストレートにぶつけますが、そのために顧問契約を解除されたことはありません。むしろ歯に衣着せぬ質問の方が喜ばれます。基本は会社のためを思っての質問であり、会社にプラスになることは社長以下の役員にも社員にもプラスになるということです。

【リハーサル】

 多くの会社が前日にリハーサルを行っています。事務所が独自に作成した想定質問の中の何点かをリハーサルの時に直接質問します。実際に質問し回答してもらった方が想定質問の意味をより理解してもらえます。それに翌日の本番でスムースな回答をするためにも顧問弁護士からの剛速球を打ち返す練習をしておいた方が良いことは確かです。一般株主主体の株主総会となった今では、招集通知を見た上での素直な質問しか飛んできません。剛速球に慣れておくと軟球を打ち返すことは簡単なことです。

【株主総会当日】

 ほとんどの会社では事前に送られてきた議決権行使書で会社提案の議案の可決要件をすでにみたしています。その場合に事務所の方針として社長に「株主との対話を楽しんで下さい」とアドバイスすることにしています。冒頭で質問したい人に手を挙げてもらって、手を挙げた株主がまんべんなく質問できる機会を与えるよう助言します。株主総会の平均所要時間は54分という結果が出ています。質疑に30分かければ十分と思いますが、長くても60分くらいで終わらせるように努めるべきと思います。それでも開会から閉会まで1時間半くらいかかります。法的に瑕疵(かし)のない決議をすることが大切であって、長時間にわたり質問を受け続けることは必ずしも株主の総意にそうものではないことを議長である社長は念頭におくべきものと思います。

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